

フェティ・ワップのアーティスト名で愛されるシンガー/MCのWillie Maxwell 2世は、約3年の服役期間を終え、2026年1月8日に釈放された。同年のエイプリルフールを前に、彼は17曲入りのアルバムをリリースし、長年のファンが待ち望んでいたものを改めて示すと同時に、これまでにない多彩な魅力を披露してみせた。キャリア初のシングルで地元の街を世に知らしめ、ブレイク期に引っ張りだこのコラボレーターとなり、披露宴で流れるラップ曲の多さでは歴代随一とも評されるデビューアルバムを残した彼に、一体何を証明する必要が残っていたのか。その答えはアルバム『Zavier』にある。 本作のフェティ・ワップは、「Trap Queen」「679」「My Way」「Again」といったヒット曲、さらに数々のディープなバンガーを生み出したあの頃のまま。長期の服役を経たMCにありがちなさびつきは奇跡的に一切見られない。大人びた色気を放つオープニング曲「Right Back To You」を聴けば、その歌声が健在であることは明らかだ。2016年の「Wake Up」以降、フェティはウィズ・カリファのようにチルでスモーキーな世界観を築いてきたが、「Like A Taylor (feat. Wiz Khalifa)」ではその本家に改めてリスペクトを送る。この曲は、もしもフランク・シナトラがニュージャージー州パターソンのストリートを生き抜いていたら、晩年に歌っていたかもしれないと思わせる趣がある。 「Real Love (feat. Honey Bxby)」や「Spot Back (feat. Rob McCoy)」には、フェティ特有の裏庭で口ずさむような素朴で温かいハーモニーが息づいている。ポップR&B寄りの「Favorite Girl」「Fool For You」、より伝統的なラップを聴かせる「N LUV (feat. Monty)」「With It Or What」、そして自身のヒーローであるMax BとOskama Estebanにささげた2曲も収録。1980年代後期のブギーを思わせる「Say When」、ビッグバンドジャズを控えめに解釈した「White Roses (feat. Divinity & Ymanie)」など、多彩なエッセンスがちりばめられている。これほど幅広い方向性を示した上で、次にフェティはどこへ向かうのか。答えは、出所した者なら誰でもそうあるべきように、“彼が望むところならどこへでも”だ。